レストラン&バー・カサンドラ

 私はカレーが大好物という訳ではありませんでした。むしろ家で何日もカレーが続くと嫌々食べていた記憶がある。それでは何故カレーレストランを始めることにしたのか、理由は2つある。1つは地元においしいカレー屋、洋食屋が無いということ。もう1つは本格的なインドカレーに出会ったことである。
 出会いは4年前にさかのぼる。居酒屋を辞めてパチスロで稼いでいた頃、友人が度々カレーショップに連れて行ってくれた。どの店もおいしいカレーであったが、仙台駅近くのビルの最上階にあるカレーバイキングの店で味わったカレーのインパクトがどこよりも勝る。
 エレベーターから出ると、東南アジア系の人が「いらさいまし〜」とお出迎え。店内からは仙台の中心部が見下ろせ、オープンキッチンに目を移すと、インド人?がタンドールでナンを焼いている。挽き肉のカレー、タンドリーチキン、サラダ、ライスを皿に盛って席に戻る。まず挽き肉のカレー(キーマカレー)を一口。鶏肉のコクと玉ねぎの甘み、それが過ぎるとトマトの酸味と唐辛子の辛みが感じられた。そして口の中にしばらく残る今までに味わったことの無い香り。この味にすっかりハマってしまい、以後この味を再現すべく、カレーの創作を続けることになった。

 衝撃のカレーに出会って間もなくカレーの創作を始めるが、納得のいくカレーが完成するまで3年を費やすこととなった。最初の壁は「コク」。鶏ガラを圧力鍋にかけたり、市販のデミソースを加えたり、いろいろ試すもどれもイマイチで結局先送り。第2の壁は「酸味」。最初から一貫してヨーグルトを使っていたのだが、「酸味」というより「ヨーグルト味」になってしまう。これも先送り。そして最大の壁が「香り」。あのカレーを思い出すと、カルダモンとオールスパイス系の香りが強かった。それが解っていてもうまく引き出せない。実のところ、開店1週間前にこんな有り様だったのである。こんな私を救ってくれたのは、パスタ用に仕込んでおいたトマトソースであった。ひたすら炒めたオニオンペーストにトマトソースを加えて煮込むとほどよい甘みと酸味になった。さらに鶏のスープとスパイスをホールのまま加えて煮込み、挽き肉・にんにく・しょうがを入れてさらに煮込む。これにてようやく完成に至った。今となっては特別に難しい手順に思えないが、ゼロからモノを作るのは大変なことと痛感した。

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